野生の歌、魂の声。| 熱き歌への想い、湘南の風にのせて…[Hip Trip]

 Reicoのデビュー・アルバム『Hip Trip』について何か書けという。2011年のリリースだから、もうかれこれ9年も前の話だ。

 しかも、私はその収録曲すべてに詞を提供した当事者だし、その制作にあたって本人の人となりはもちろん、当時つき合っていたボーイフレンドとのこと、将来への悩み、歌への想い、など様々なことを聞く機会もあり、次第にその奔放なようでいて実はキチンとしている、弾けているようで落ち着きをもっている、おおらかで野性的なようで内省的な奥ゆかしさをもつ、アホを装っているけれど天才的なひらめきと頭の回転の早さをもつただ者ではないコ、といういわゆるアンビバレントな魅力にすっかり虜になってしまって、贔屓めにしか書けないに決まっている。

 そんな身贔屓がすぎる文章を読んだって、きっと誰も真に受けてくれないし、面白くないに違いない。だが、待てよ。ひとつだけ、この場を借りて、このアルバムをきっかけにReicoという歌い手を知る人に、知ってほしいことがある。そう思い、筆を、あ、いやPCを開けた。

 

 このアルバム収録曲の中には、ボサノヴァあり、レゲエ調あり、ポップな曲もファンキーな曲も、しっとりとしたバラードもある。そのどれもが、Reicoそのものであり、彼女の歌の世界に相違ない。つまり、どんな曲調であろうと自分のものにすることができる~それはきっと彼女の天性の大きな才能に違いないのだ。

 そして、それこそが、このアルバムを聞いた多くのミュージシャン仲間に、『うん、悪くないね』『何か、これ好きだな』『いいアルバムだよね』と言わしめる要素なのだろうと思う。

 

 おそらく彼らは、彼女よりも歌の抜群にうまい歌手と一緒に仕事をしているだろうし、もっと売れている歌手も知っているはずだ。このレコーディング時のReicoは花粉症まっただ中だったそうだし、私生活でも悩みを抱えていて、しかも初レコーディングの緊張もある。決して万全のコンディションではなかった訳だ。

それでも、なお、上記の感想である。

 

 いったん聞き始めてしまうとなぜか聞き込んでしまう。歌の中に、彼女が等身大で歌うその世界に、はっきりと心に届けられるその言葉に、引き込まれ、心が揺らぎ、魂が震えるのだ。

 私の歌詞がいいと自慢している訳では決してないのだが、他人が紡いだ言葉に彼女は言霊を与え、活き活きと蘇らせる術を知っている。

 

 だが、申し上げておく。このアルバムは彼女のその後のキャリアの序奏にしかすぎず、その才能のごくごく一端を披露したに過ぎなかったのだ。

 アフリカン・ゴスペルのクワイア『Marembo』のメンバーとして数年間、活動していた頃には、そのいくつかのレパートリーで見事なリードを取り、確かな足跡を残した。

 中でも、スワヒリ語圏で人気のSarah Kのヒット曲・Niinueの圧倒的ソロは、いまでも、いつでも聴けるものなら聴きたいと思わずにはいられない。

 

 かと思えば、1回のライヴ限定で結成された『レイマリ&ピラーズ』で披露された昭和歌謡にあっては、恋のバカンス、あの日に帰りたい、ジョニーへの伝言などの名曲を自分のものとして歌唱したが、何といっても井上陽水/最後のニュースの気持ちの籠ったパフォーマンスぶりにはしびれさせられたものだ。

 同様に、ある年の年始ライヴ限定でジプシールンバの我が国を代表するグループ、Gipsy Grooveから主要メンバーのLuis & Marioの2人を迎えて結成した『Reico y Las Zapas』 では、ジプシールンバの情熱的なビートにのせて、異邦人やコーヒールンバなどを演奏して喝采を浴びたが、中でも童謡・森のくまさんのはまりっぷりには驚かされたものだ。

 そして、なにより特筆すべきは現代の音楽に留まらない許容度の大きさであろう。中世音楽集団『Porrectus』の創立メンバーとして、元・今様吟遊詩人コンセエル・ノヴァや超時代ポップスの旗手、カオス☆ヴォックスを主宰し、中世音楽の地平を広げたクニ黒澤氏と活動を共にしたReicoはなんと中世古楽においてもその才能を遺憾なく発揮し、ノンヴィブラートで地声という特徴を活かし、リードからコーラス、果てはリコーダーや吹奏オルガンといった器楽に至るまでこなしてみせたのだ。

 彼女の歌にボーダーはない。ジャンルや得意分野など、もちろん問わない。ただ、彼女は歌いたい歌を歌い、届けたいメッセージを届け、ご機嫌なビートと最高のヴァイヴをプレゼントしてくれるのだ。

その歌いっぷりは、ファンキー、エネルギッシュ、パワフルなどという形容詞とは少し違う。ナチュラル、ワイルド、スポンテニアス、んーどれもしっくりこないなぁ。ストレート、そうだ、Straight! 誠実で、正直でまっすぐで、筋の通った、ダイレクトに心の奥底まで届く、そんな歌声。だからこそ、聴き手も逃れられない、聴かざるを得ない、正対しない訳にはいかない、そんな気にさせる歌手がどれほどいるだろうか?

 

 もし、この『Hip Trip』を聴き、私のこの文を読んでReicoという歌手に興味を持った人がいたとしたら、私はただ謝るしか術を持たない。頑固でまっすぐな彼女は機が熟し、気が向いた時にしか、きっと歌わないだろうから。それはすなわち、残念だが、あなたはきっと彼女の歌を聴くことは適わないだろう、ということを意味するのだ。

ただし、ひょっとして運が良ければ、彼女の2ndアルバムを手にする機会がまったくないとも言い切れない気もしている。もっとも、これは私のただの願望、妄想の域を出ないのだけれど

 

栗沢右近(文筆家・詩人・作詞家・訳詞家)

官報向け記事の執筆から、某音楽月刊誌のCDレビュー、音楽エッセイ、大手音響メーカーの社外アドバイザリー・スタッフなど幅広いキャリアを積み、自身の事務所『聖韻房』を設立。某ゲーム音楽作曲家のサントラ盤のため、英国のコーラス隊向けにラテン語詞を作成。古ケルト音楽、特に13世紀スペインのアルフォンソ賢王編纂による『聖母マリアの聖歌集』から数曲に日本語詞を付して現代に蘇らせるプロジェクト、現代のトラッド、スコティッシュワルツなどに日本語詞を付すプロジェクト、など数々の仕事を残す。世界の民族音楽を演奏する日本人音楽家を集めた企画CDMundoMusicoにて、栗沢右近の世界と銘打ったアルバムが発売されたり、ライヴで特集が組まれたりと一部ミュージシャンの間では知る人ぞ知る存在。日本語、英語、ブラジル・ポルトガル語、スワヒリ語、教会ラテン語による作詞を得意とする。

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【鎌倉の街からワールドミュージック】

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湘南の腹ペコミュージシャンは、みーんな大好き。江ノ島電鉄線・鎌倉駅より徒歩2分にある、隠れ家的なカフェ・ワンダーキッチン(WanderKitchen) のマスターの、民族音楽レーベル『Tacto Rustico』の作品を、studio iota labelより一挙250曲リリース!

第三弾は「Hip Trip 熱き歌への想い、湘南の風にのせて…」「Vento Maduro ブラジル音楽への憧憬、晩夏の風にのせて…」で検索!

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